才木玲佳さんが、いま注目のパティシエたちと対談を繰り広げるスペシャル企画「おさトーーク!」。パティシエを目指したきっかけや、「カラダ・アタマ・ココロにシュガーチャージした経験=シュガーチャージ体験」などにじっくりと迫ります。才木さんが、お店の名物スイーツもいただいちゃいますよ!※撮影のためマスクを外しています
- 才木
- はじめまして。シュガーチャージアンバサダーで、スポーツタレントの才木玲佳です。
- 伊藤
- パティスリー メゾンドゥースの伊藤文明です。よろしくお願いします。緊張しますね。
- 才木
- またまた。慣れていらっしゃるんじゃないんですか?
- 伊藤
- いやいや(笑)、本当に。
- 才木
- 今日は、伊藤さんのお店で人気のマカロンを持ってきていただいたんですが・・・お楽しみのシュガーチャージは後にして(笑)、まずは伊藤さんがパティシエを目指したきっかけから教えていただけますか?
- 伊藤
- きっかけ・・・そうですね。自分は高卒なんですが、実は進路を決めずに卒業しちゃったんです。プータローってやつですね(笑)。で、服に興味があったので、服飾系のお店でアルバイトをしていました。そうしたらなぜか、そのお店がワッフル屋さんをはじめることになりまして。
- 才木
- 洋服屋さんなのに?
- 伊藤
- そうそう。当時自分は金髪の若造だったんですけど、そのワッフル屋さんを任されることになって。自分で店を開けて、掃除して、接客して、ワッフルを焼いて、お会計もしてという。
- 才木
- なんだか楽しそうですね。
- 伊藤
- 楽しかったです。そんな矢先に、就職していない自分を見かねた叔父から「ウチのホテルに来ないか」と。
- 才木
- お誘いが!
- 伊藤
- その叔父が、たまたま横浜にあるホテルのお偉いさんだったんです。それで、自分はベルボーイは向いてなさそうだし、料理は大変そうだし・・・でも、お菓子ならできるかな、と。ワッフルの経験もあるし、お菓子だけに甘いかな、なんて思って(笑)。
- 才木
- 実際、どうでした?
- 伊藤
- めちゃくちゃ厳しかったです。びっくりしました。
- 才木
- 甘くなかったんですね(笑)。お菓子はもともとお好きだったんですか?
- 伊藤
- 好きでしたね。特別なものというイメージがありました。子どもの頃は、ケーキを食べるなんて兄弟の誕生日くらいだったんで。ただ、いざ作る方になってみると、こんなに大変なんだなって。びっくりしましたよ。
- 才木
- そんなにですか?
- 伊藤
- 1個や2個作るわけじゃないですからね。何百個と作らなきゃいけないので、もう単純作業の繰り返しで。
- 才木
- 味も見た目も、全部同じじゃなきゃいけないですもんね。
- 伊藤
- そう。ずっと立ちっぱなしだし、はじめは本当に大変でした。ルセット(フランス語でレシピのこと)も全部フランス語なんですよ。
- 才木
- えー!
- 伊藤
- 英語すらまともに勉強していないのに、フランス語なんてもってのほか。材料の計量すらできなかったです。本当にゼロからのスタートでしたね。
- 才木
- そのホテルでは何年ぐらい働かれたんですか?
- 伊藤
- 2年半くらいですね。自分にとって、これだけ続いた仕事ははじめてでした。それまでは、バイトをはじめては辞めての繰り返しだったので。
- 才木
- どうして続けられたんだと思います?
- 伊藤
- 自分が頑張ることで、親や周りの人たちが喜んでくれたんですよ。当時まだ健在だった曾祖母が、「文くん、いいところに就職できてよかったね」とか言ってくれたりして。それ聞くと、もう頑張るしかないですよね。
- 才木
- いい話ですね。
- 伊藤
- あとは、仕事をはじめて2年くらい経った頃に、お菓子のコンクールに挑戦する先輩のお手伝いをする機会があったんです。17時くらいに仕事が終わってから、毎日終電まで。その先輩の姿を見て、はじめは「何でこんなに頑張るの?」と不思議だったんですけど、お手伝いをしているうちに先輩を応援している自分に気がついたんですね。
- 才木
- 火がついた感じですか?
- 伊藤
- その後、先輩の勧めもあってジュニアコンクールに挑戦したんですが、ボロ負けしたんです。技術も知識も全然足りなくて。で、その大会の上位者が、インタビューで「普段どおりの仕事ができました」って話していて。えっ?自分と同世代の人間が、普段からこんなすごいことやってるの?とびっくりしましたね。そこでちょっとスイッチが入りました。
- 才木
- そして、次のお店へ?
- 伊藤
- ホテルの仕事に文句があったわけじゃないんですが、もっと上の世界を見たいと思うようになって。そのとき、たまたま知り合いの紹介で、堀江新シェフのケーキ屋さん「ラ・ヴィ・ドゥース」の門を叩くことになったんです。堀江シェフはパティシエの世界大会で部門別1位を獲得されている方で、これは技術を磨くチャンスだな、と。
- 才木
- 絶好のタイミングですね!
- 伊藤
- で、入ったら・・・ホテルの比じゃないくらい厳しかったです(笑)。ケーキ1個の重みが違うというか。自分が作った1個のケーキを買っていただいてナンボの世界ですから。
- 才木
- なるほど。
- 伊藤
- 堀江シェフは多くを語らない方で、はじめの3年は「はい」「すみません」「ありがとうございます」くらいしか会話したことがありませんでした。
- 才木
- そこでは何年くらい働かれたんですか?
- 伊藤
- 4年半ほどですね。堀江シェフのもとで働いて一番よかったのは、考える力がついたことです。それまで、自分がどれだけ何も考えずに働いてきたのかということを思い知らされましたね。
- 才木
- その後、フランスでの修行や、レストランなどでの勤務を経て、ご自分のお店を開業されたんですね?
- 伊藤
- 堀江シェフから、「30歳までにフランスへ行って帰ってきて、雇われシェフを経て、35歳までに自分の店を開きなさい」って言われていたんですよ。
- 才木
- その通りになったんですね!
- 伊藤
- まあ、自分は割と素直なので(笑)。34歳のときに、居抜きのケーキ屋さんを買い取ったんです。居抜きということは、何か事情があって一度閉店した場所でもあるので、不安な気持ちはありましたけどね。
- 才木
- そこで成功されているわけですから、すごいですよね!
- 伊藤
- 成功しているかどうかはわからないですけど・・・まあ、軌道に乗れたきっかけのひとつが、「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」での受賞でしたね。
- 才木
- 堀江シェフも受賞されている世界大会ですね!詳しく教えてください。
- 伊藤
- 「クープ」はパティシエのワールドカップとも呼ばれているハイレベルな大会で、2年に1度、世界大会が行われるんです。自分もいろんなコンクールに挑戦してきましたが、その集大成として取り組みました。やらずに後悔するよりは、やって後悔しようと。でも、コンクールに向けての練習をスタートしたら、すぐに「やらなきゃよかった」って思いましたね(笑)。
- 才木
- ご自身のお店を切り盛りしながら、コンクールにも取り組むって・・・大変ですよね。
- 伊藤
- 毎朝3時か4時くらいまで練習に打ち込んで、それで8時から仕事という生活をずっと続けていましたね。カーテンを開けたまま寝るんですよ。そうすると、7時半には自然と目が覚める。
- 才木
- えー、信じられない!
- 伊藤
- いつか家族に見放されてしまうかも・・・なんて思いながらの毎日でした(笑)。自分の場合は、3度目の挑戦でなんとか日本代表に選ばれました。フランスで行われた世界大会には、妻と2人の子どもがきてくれました。自分の父と母も駆けつけてくれましたね。
- 才木
- ちゃんとご家族も応援してくれていたんですね!
- 伊藤
- そうですね。結果的に銀メダルを獲得して、家族も喜んでくれました。特に父と母には本当に迷惑をかけてばっかりだったんで・・・努力が報われてよかったと思います。
- 才木
- すばらしい親孝行ですね!
- 伊藤
- 母が、会場に向かうタクシーのなかでずっと祈っていてくれたらしくて・・・それ聞いたらちょっと、泣けちゃいましたね。
- 才木
- 堀江シェフも喜ばれていたんじゃないですか?
- 伊藤
- 実は、世界大会には3人のチームで出場するんですが、チームメイトのうち一人が「ラ・ヴィ・ドゥース」の後輩だったんですよ!堀江シェフは、もうめちゃくちゃ喜んでましたね。
- 才木
- いい恩返しですね。
- 伊藤
- はい。親孝行も、師匠への恩返しもできたし、お陰さまでメディアにもちょいちょい取り上げてもらえるようになりました。これからは、もっと多くのお客さまに喜んでいただける店づくりをしていきたいですね。お客さまにとってのシュガーチャージの場所であり続けたいと思っています。
- 才木
- じゃあ最後に、私もシュガーチャージさせていただいてよろしいでしょうか!?
- 伊藤
- もちろんです!今日は10種類のマカロンを持ってきました。
- 才木
- えー!迷っちゃいますね。じゃあ、このピンク色のかわいいマカロンから・・・。
- 伊藤
- コクリコ フランボワーズですね。ひなげしのやさしい香りがしますよ。
- 才木
- 早速いただきます!
- 伊藤
- どうぞ。
- 才木
- うん・・・おいしい!たしかに、微かなアロマの香りがするかな?真ん中のフランボワーズジャムも甘酸っぱくてとてもおいしいです。まわりの白い部分はバタークリームですか?
- 伊藤
- はい。そこもこだわりのポイントです。うちでは全卵を使って、バターをしっかり立てて、キレとコクを出しているんです。
- 才木
- これだけバターが香るマカロン、私はじめてかも。なのに軽い感じで・・・本当においしいです。
- 伊藤
- ありがとうございます!
- 才木
- 伊藤さんはどんなお菓子がお好きなんですか?
- 伊藤
- チョコレートが大好きですね。趣味のゴルフに行くときは必ず持っていきます。あと、忘れられないのが、母が作ってくれたレアチーズケーキ。それがめちゃくちゃおいしくて。自分は3人兄弟なんですけど、取り合いになっても大丈夫なように、ミニカップでいっぱい作ってくれるんですよ。
- 才木
- なるほど~!
- 伊藤
- お店でも売りたいくらいです。
- 才木
- ぜひ!私も、伊藤さんのおふくろの味、食べてみたいです!
- 伊藤
- ミニカップでね(笑)。
- 才木
- 取り合いにならないように気をつけます(笑)。本日は楽しいお話、本当にありがとうございました。
- 伊藤
- こちらこそ、ありがとうございました。
- パティスリー メゾンドゥース オーナーシェフ
- 伊藤 文明さん
1979年愛媛県出身。1999年「横浜ロイヤルパークホテル」に入社し、キャリアをスタート。2001年、堀江新シェフの「ラ・ヴィ・ドゥース」へ。2006年、渡仏。帰国後「小笠原伯爵邸」のシェフパティシエなどを経て、2013年に「パティスリー メゾンドゥース」開業。世界のトップパティシエが集う「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」での銀メダル、「クラブ・ガレット・デ・ロワコンクール」優勝、「ルクサルド グラン プレミオ」優勝など受賞多数。
パティスリー メゾンドゥース
- 住所:東京都八王子市南大沢2-206-9
- 営業時間:10:00~19:00
- 定休日:火曜日
- HP:https://maisondouce.co.jp/